歴史を知ればもっと楽しい、
荘内神社。

アート・カルチャー

荘内神社は鶴岡市の中心部、鶴岡公園の中に位置し、大きな鳥居とまっすぐに続く参道が目印。読み方は、”しょうない”神社。不思議なことに、”しょうない”と書くとき、「荘内」と「庄内」どちらの表記も正解なのだそう。

鶴岡暮らしがたった3年目のわたしでも、ふらりと立ち寄りやすいひらけた雰囲気が好きで、この場所にはもう何度も訪れました。引越しのご挨拶から始まり、お祭りや七夕、新年のお参りのときにも。いつでもすぐ側で、わたしたち家族の生活をあたたかく見守ってくれる大きな存在だと感じています。幼少期から庄内で暮らしてきた人にとっては、七五三の思い出なんかもあって、さらに愛情深い場所なんじゃないかな。

観光の人もいるけれど、愛犬のお散歩中の人、自転車の人なんかもいる。それぞれの、生活の足音がする。荘内神社のご利益は、開運招福・家内和合・産業繁栄。なんでも、実在した酒井家の歴代藩主の中から初代・二代・三代・九代の4名が御祭神として祀られているということらしいんです。(ちなみに、正確には神さまなので4柱と数えるそう)

神社があるのは、かつて”鶴ヶ岡城”というお城の本丸御殿があった場所で、それはつまり江戸時代250年にわたりこの場所をおさめていた酒井家のお殿さまが住んでいた、庄内の拠点とも呼べるところ。ちなみに、”鶴ヶ岡城”に天守閣はなく、お城全体が平屋造りのお家のような佇まいだったとか。ほわほわと頭の中にその姿を描き、平城が建っているのを想像すると、庄内の雰囲気にぴったり似合う気がします。歴代藩主は、必要以上の派手さを求めない方たちだったのかなと性格までイメージして、勝手ながらに愛着が湧いてきました。

さて、江戸から明治へとうつり変わる時代。全国で廃城令が出たことにより、残念ながら”鶴ヶ岡城”は解体の運命をたどることに。すっかりさら地になってしまったお城の跡地を見た人々が、これではあまりに寂しいと感じたのか、多くの市民の希望により神社を建立したというのが、誕生までのストーリー。

この歴史を知ってから荘内神社を見てみると、なんだか更に身近な存在のように感じてきます。天照大神などの神話の神様ではなく、実在の人物を祀っていること。また、人々の声により建てられたこと。そして、明治初期という、そう遠くはない時代に作られたことなどが、身近に思える理由なのかも。

“鶴ヶ岡城”はなくなってしまったものの、江戸から今に受け継がれるものもあるそうです。お城の一部として使われていた瓦が、神社の屋根として現在にも残っているなど、その姿を変えて”生き続けている”ところも。さらに、神社の造りをひとつひとつ丁寧に見ていくと、当時の手しごとから人の営みを感じたりして、過去と現在がひとつながりであることを教えてくれます。例えば、社殿の”釘隠し”。かつての木造建築は釘を使わないのが基本だからと、家紋で隠したところに職人技がきらり。

荘内神社の入り口には、四季折々色とりどりのお花が浮かぶ花手水(はなちょうず)があって、毎月1日には、スタートの意味を込めて新しく入れ替えているそう。無心で見入ってしまう水紋に、透明の膜をはったような花、そして水滴のひとつぶは宝石みたいに煌めいていました。美しく手入れされたお花はつい記録したくなるもので、SNSなどで荘内神社を検索すると、さまざまな花手水の写真を見ることができます。最近は、写真を見て神社を訪れる方も多いとか。

季節のお花に癒されるのは花手水だけではなくて、御朱印も。そもそも、御朱印とは一体何だろう?と疑問に思いたずねてみると、”参拝をした印”だと話してくれました。スタンプラリーのように集めるものではなく、自分が訪れた場所と、その日時の記録だと考えるのが正解なのだそう。記録のためにあると聞いて、写真を撮り続ける感覚と似ているのだと思いました。

折れた梅のなかに、命が生まれた。

水みくじを引いたら、結果は小吉。地道に精進します。

おみくじを結ぶ。たくさんの想いが結ばれている。

絵馬の種類も様々で、七五三用など目的ごとに描かれていた

まっすぐに開けた道の先には、出羽三山が見えるそう。

荘内神社周辺には、歴史的建造物が数多く点在しています。荘内神社でお参りをした後は、庄内藩主の酒井家の方々が生きていた当時に想いを馳せて、めぐり続ける四季を愛でながら、ゆっくりと歩きたい。どの季節もいいけれど、そう何度も来れない遠方の方には、やっぱり桜の季節がいちばんおすすめです。

いつもわたしたちの生活を見守ってくれてありがとう、またすぐに来ます。

基本情報

名称/荘内神社
住所/山形県鶴岡市馬場町4-1 鶴岡公園内
電話/0235-22-8100
休業日/なし
URL/http://jinjahan.com
アクセス/JR鶴岡駅から車で約8分
駐車場/有・無料

すずきまき

すずきまき

写真家・物書き。神奈川県横浜市に生まれ、2020年春に山形県鶴岡市へ移住。同年、庄内の自然に魅せられて創作活動をスタート。柔和な雰囲気の作風で、日々のなかにある光を写している。2022年4月には鶴岡市内の湯田川温泉にて自身初となる写真展『春眠』を開催した。 ライフワークはひとり旅。温泉めぐりと自然観察を軸に目的地を選び、現在は東北地方を開拓中。無類の温泉好きで、温泉ソムリエの資格をもつ。夫婦+2匹の猫、はるとあきとともに気ままな庄内ライフをおくっている。

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