余白に合わせて
心の自由を取り戻すのだ、ニャ。
国見山 玉川寺

パワースポット&絶景

心がざわついた時の駆け込み寺

鶴岡駅からは車で約20分ほど

お気に入りのお寺が近くにあるのはラッキーなことだと思う。

生活や仕事に追われてなんだか心がザワザワする時、不安定な世界情勢に心を奪われてしまう時、喫茶店ではないし、誰かとランチする、という気分でもない。

そんな時に過ごしたい場所のひとつが「玉川寺」(ぎょくせんじ)。

お寺なら、女性ひとりで“ぽつん”といても、無理して明るい表情をしなくても(私は自然体でいるつもりでも怒り顔と言われがちなもので…)、きっと誰も「何かあったのかしら。」と気にすることはなく、たぶん何かあったとしても「そういう時なのね。」とほどよい距離を保ってくれるのでは、という先入観。心を静めるのにちょうどいい場所だと、個人的には思っている。

「花の寺」で季節を愛でる

6月の爽やかな風とともに、山門には木漏れ日が心地よく広がり「やっぱりきてよかった。」とこの時点で気持ちが上向きになる。

足元に、ぽつ、ぽつ、ぽつ、と大切に育てられた子どものように咲いているのは「九輪草(くりんそう)」。思わず摘んでしまいそうになる気持ちをおさえて(アブナイアブナイ!)花に目線を合わせるように屈んで覗き込む。儚げで、可憐で、まさに私にはない魅力に軽い嫉妬と魅力が重なり「あ〜かわいなぁ〜〜…。」と、か細く心の声が出てしまったではないか。

玉川寺の九輪草の見頃は5月中旬から6月上旬

近くではマダムたちが「この葉っぱはね…」、「この花はね…」と、ひとつひとつの花を愛でながら軽やかに談笑中。そうそう、ここは季節ごとに綺麗な花を咲かせるということで「花の寺」としても親しまれているのだ。

大輪の花も、もちろん綺麗だけど、冬が厳しい東北に住んでいると小さく蕾をつける花の力強く、たくましい姿につくづく愛おしさを感じる。

余白と心の関係

境内にはマスク越しでもほのかに薫る白檀のお香。訪れる度に、この香りにも癒される。
国の文化財名勝にも登録されている玉川寺庭園は、ゆったりと巡ればそれなりに、駆け足で巡れば10分ほどで散策が楽しめる。

この日は「取材」を口実にご住職とまったりお茶タイム。ご住職は小さい頃、実家であるにも関わらず様々な人が出入りするこのお寺、「プライバシーがないようで嫌だった。」とか、「矛盾しているようだけど実は人と関わるのが好きだったんですね。だからいろんなイベントをしても楽しいし、結果的に住職になってよかった。」とか、取材にしては全く歴史のことなんかを聞いていないから、「取材になっているかなこれ。」とふたりで笑い合った。

抹茶は一服600円

ご住職、前日はテレビ取材があったとかでなかなかご多忙の様子

毎月8日の夜、第4日曜日の朝、一般参加ができる座禅会(お休みになる月もあります)があり、私も以前参加したことがあるのだけど、座禅の内容はもちろん、なんとなくこのご住職の気さくな雰囲気が好印象でまた来たいと思ったし、たぶん少し期間が空いても受け入れてくれそうと感じた。この「なんとなく」はたぶん波長のようなもので、大事だと思っている。きっと同じように感じている人は多く、定例座禅会は周りにも参加している知り合いが結構いる。

座禅はご住職の日課になっているらしく、毎日10分から20分間座禅をすることで1日を気持ちよく過ごせるのだとか。

座禅中のある時「禅の影響を受けている日本庭園には必ず余白がある。余白があることで心を自由に解き放つことができる。だから実は余白ってとても大事なんだ。」ってそんなことが頭に浮かんだそう。ぎちぎちに詰まった場所で心は解放できない、何にでも遊べるスペースが必要なのだ。

看板猫のてこちゃん。「心は整いましたかにゃー?」

最後に「内緒なんだけどね。」と秘密の隠れ場所を教えてもらった。ここはまだ内緒、内緒の喫茶店。「お寺で喫茶店はじめました、なんて、不思議に思われるでしょ。」と、はにかむご住職。サワサワとした葉と小鳥のさえずり、竹藪から入る静かな光に照らされた室内は、そんな心配はご無用と言わんばかりに素敵な空間だ。

ひっそりと喫茶室「水月庵」がオープン。(不定期)

お寺に気軽に足を運ぶきっかけになれば、といつも空いているわけではいけれど「声をかけてもらえればあけますよ。」だそう。またしても玉川寺に心の拠り所ができそうではないか。

取材を口実ではあったけれど、近頃少しざわついていた心が整った気がする。
さ、いつもの場所に戻ってまたひとふんばりしよう。

基本情報

名称/国見山玉川寺(ぎょくせんじ)
営業時間/4月〜11月 9:00〜16:30、11月〜3月 9:00〜16:00
拝観料/高校生以上400円、小・中学生200円(団第割引あり)
休業日/なし
アクセス/JR鶴岡駅から車で約20分
ホームページ/https://www.gyokusenji.or.jp/

本間聡美

本間聡美

Harvest Photographer 庄内生まれ、農家の娘。 都会に憧れ、早く都会に出たい一心で、進学を機に東北の都仙台へ。卒業後は撮影、制作の仕事に従事。仙台ライフを楽しみつつも、仕事を通じて出会う地方のひとたちの力強さに魅力を感じ、自分の故郷を気になりはじめました。 仙台と庄内の2拠点生活などを経て2015年から庄内を拠点に活動をスタート。現在はフリーランスとして東北の、食・農・人・風土などの撮影を手掛けています。 今もやっぱり冬は苦手ですが、雪解けから一気に進む季節の彩りに、すっかり魅了されっぱなしデス。 移動、お散歩、寄り道好き、まっすぐ家に帰れません。

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