自分史上最高!
枡川鮭のはららごで
醤油漬けを作ってみた。

おいしい話

わたしが暮らす土地では昔から「母狩山が雪で3回白くなったら根雪になる。」と云われている。「寒い寒い」と弱音を吐きながら、1回目、2回目…と山が白むのを数えるうちに、いつの間にか冬を受け入れているわたしがいる。3回の雪は慣らし保育のようなもので、徐々に体が季節に馴染んでくる。とはいえ、やっぱり冬は寒い。笑

そんな冬の始まり、庄内平野に初めての雪が降る頃。

わたしは、はららごごはんを食べなきゃ寒い冬が越せない。「はららご」とは、鮭の卵巣のことで、卵膜を開くと「いくら」がこぼれ落ちる。そのいくらを醤油漬けにしてごはんにのせたものが「はららごごはん」。

庄内では季節になると、お母さんたちがはららごを買い求め、その家ごとのレシピではららご(いくら)の醤油漬けを作るのだ。炊きたての新米(もちろん米どころ庄内のものに限る!)に豪快にのせたら「宝石箱や〜」と言いたくなる程に、光り輝くはららごごはんが出来上がる。120点満点の初冬のご馳走。

今年は初めて自分史上最高の「はららごごはん」作りに挑戦してみることに!

まずは、新鮮なはららごを手に入れる。

フロントガラス一面にペイズリー柄のような氷の結晶。早起きは三文の得。

車のフロントガラスが凍って氷の結晶がきれいだった早朝。向かったのは鳥海山の麓、遊佐町の丸池様のほど近く、捕れたての鮭やいくらを直売しているという枡川鮭漁業生産組合さんへ。

鳥海山の伏流水が流れる滝渕川のすぐ側にある枡川鮭漁業生産組合。

捕獲作業を見学させていただく。捕獲のための準備が進む。

川には、鮭を捕獲するための仕掛け「ウライ」が設置されている。「ウライ」とはアイヌ語で「簗(やな)」の意味。簗とは杭などで川をふさいで魚の遡上を遮断し、籠の中などに導いて採捕する漁法のこと。もともとはアイヌの人たちが柳の木で仕掛けを作って行っていた漁法らしい。

仕掛けをのぞくと、所狭しと鮭がたくさん。バシャバシャと白波を立てている。

鮭をすくい上げるサデ網はクレーン操作で持ち上げられるようになっている。

漁が始まる。ウライからサデ網いっぱいに鮭が引き上げられ、威勢よく尾びれを振りながら作業台に。捕獲された鮭はすぐに急所をコツンと打ち眠らせ、オスとメスに分けられる。

2〜3ヶ月も採餌せずに川を上ってきたとは思えないほどの活きの良さ!
左のレーンがメスで、右がオス。

優しい手つきで採卵するのが、組合長の尾形修一郎さん。

まさに最盛期。次々と鮭が水揚げされる。メスはその場ですぐに採卵される。身もいくらも、それぞれ分けられて次々と運ばれていく。漁は12月末まで毎日行われるそうだ。

「今日は販売用の採卵だけど、受精させる時はもっと慎重に傷つかないように採卵しているんだよ。強くて大きい元気な稚魚を育てて、世界の海を生き抜いて帰って来れるようにね。」と採卵をしながら、組合長の尾形さんが教えてくれた。

ここでは食用に捕獲するだけでなく、受精させて孵化場で稚魚を育てていて、毎年約1千万匹を放流しているんだそう。今日捕獲した鮭も尾形さんたちが数年前に大事に育てて放流した鮭たちなのだ。

鮭だから自分の育った川に戻るのは当たり前なんだけれど、未来へ命をつなぐその営みを目の当たりにしたら、とても「当たり前」なんて言葉では片付けられない。江戸時代から脈々と受け継がれてきた鮭への情熱、ひたむきさに触れ、心が熱くなった。

かがやくはららご。海で捕れたものは卵膜に包まれているが、川で捕れたものはメスのお腹を開くとはらりと粒々にほどけるんだそう。

今日の漁獲高はどうだったかな。

組合員は10名で、女性と男性が半々。男性社会の漁業組合では全国的に見ても珍しいとのこと。

作業が終わり、コーヒーとお茶菓子でほっと休憩タイム。

「山形を鮭の一大産地にしたいと思ってるんだ。枡川以外にも孵化場ができるように、各所への働きかけや視察を行っている所でね。これは、夢じゃなくて絶対に実現する目標だからね。」と熱く語る組合長の尾形さん。聞いているわたしまでワクワクしてくる、未来の展望を伺わせていただいた。そして、いつか新しくできる孵化場にも必ずお邪魔することを約束した。

実現する日を心待ちにしています。尾形さん、ありがとうございました!

組合長の尾形修一郎さん。鮭への情熱がすごい!すてきな方。

組合では、はららごや鮭を直販している。最盛期は11月下旬〜12月中旬頃。70cm超もありそうな鮭は迫力あり。

鮭の包装紙は米袋!春〜秋は、鳥海山の清らかな伏流水で米作りをしているんだそう。

組合直伝!
はららご醤油漬けのおいしい作り方

歓喜!我が家に、はららごがやってきた!
しかも枡川のはららごは、卵膜を外す手間がないから素人のわたしにはとてもうれしい。
組合に伝わるおいしい作り方を詳しく教えていただいたので、さっそく実践。

準備するもの

・枡川のいくら 1kg
・飽和食塩水  水2〜2.5L+食塩1kg(目安)
・醤油 適宜
・ボウル
・ザル
・濡れ布巾
※今回は、いくら500gで仕込んでみました。

01. 飽和食塩水を作る。

これ以上塩が溶けない状態の食塩水を作ります。塩分濃度が不十分だとおいしいいくらはできません。

底に溶けない塩が沈んでいる。飽和食塩水ができたしるし。

02. 飽和食塩水に、いくらを浸して2分間手で撹拌する。

いくらをザルに入れて、飽和食塩水に浸し、手で優しくかき混ぜます。すぐにいくらが固く感じるようになりますが心配ありません。これが良くできている証。

塩水につけたら、色が白くなり粒にハリが出る。

03. 撹拌したらザルをあげ、塩水をしっかりきる。

この状態でも食べることができますが、さらにおいしくするには、ザルに入れたまま水気を切った状態のいくらに、濡れ布巾などで乾燥防止をして一晩冷蔵庫で馴染ませます。これがとても大事なんだそう!

濡れ布巾をかけて、一晩冷蔵庫で休ませる。

04. 冷蔵庫から取り出し、醤油を混ぜる。

冷蔵庫から取り出したら、そのまま塩いくらとしても食べられますが、醤油を混ぜれば醤油いくらになります。醤油を適宜入れたら3分ほど混ぜ、ザルで余分な醤油を切ります。

●ワンポイント!
醤油を切ってから、しばらく馴染ませると更においしくなります。
長期保存したい場合は、出来上がったいくらを小分けにして冷凍保存してもOK。

醤油を加えて混ぜるとツヤが増してくる。

余分な醤油を切る。

初めてのはららごの醤油漬け、上手にできました。

保存容器に移し替えたら完成!
たまらず炊きたてあつあつの丼ごはんに、はららごをたっぷりのせて。

いただきまーす!

大粒いくらの旨味と塩味が口いっぱいに広がる。あ〜食の天国・庄内に生まれてよかった!

完璧なビジュアル!お供は大好物の芋煮汁。これで冬が越せそうです(涙)

基本情報

名称/枡川鮭漁業生産組合
電話番号/9〜12月 0234-77-2083、 1〜8月 0234-72-5257
営業時間/お電話にてご確認ください。
ホームページ/http://masukawa-salmon.com/
アクセス/JR吹浦駅から車で約4分
駐車場/無料あり

大瀧香奈子

大瀧香奈子

グラフィックデザイナー フルーツ王国 鶴岡市櫛引の農家に生まれる。おいしいものに囲まれて育ったからか、食べることがとにかく大好き!新しいことを知ること、体験することが好き。 最近は、庄内の風景を写真で切り取ること、植物を育てることに夢中。 面白そうなことを見つけると、すぐ飛び込みがち。 庄内にあるデザイン事務所 はんどれい株式会社所属。 SHONAI Fun!では、デザインやアートディレクション、編集などを担当。

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