酒井家庄内入部400年
歴史絵巻をひもとく荘内大祭

お祭り・イベント

江戸時代の衣装を纏った大名行列のお役の人たち、見物客の賑やかな声に、「たこ焼き」や「クレープ」など出店のカラフルなテントが並ぶ。そこかしこに、お祭りの高揚した空気感が漂っている。沿道には家族連れや着物姿のご婦人、友達同士、続々と観客が集まってきた。

2022年10月9日(日)に行われた「荘内大祭」。旧藩主を慕う市民の手で大名行列を再現されるお祭りで、酒井家庄内入部400年となる2022年は、庄内各地の伝統芸能も加わり、総勢約600人が100年に一度の節目を賑やかに彩った。

勇壮な姿がかっこいいなぁと思いつつ、実は歴史に弱い私。でも今回のお祭りでは、歴史を知って楽しめるように、行列が練り歩く各所で行列についてのアナウンスがあり、わかり易い説明でとても楽しめた。せっかくならもっと詳しく知りたい!と思い、荘内神社の石原和香子さんにお話を伺う機会をいただいた。お祭りの写真を振り返りながら「へぇ〜」が連発。
これを読めば、次の荘内大祭はさらに楽しめること間違いなし。

祭りのはじまり

荘内大祭がまもなく始まる、鶴岡公園の北広場。
荘内大祭の行列はいくつかのパートに分かれていて、庄内藩の参勤交代を再現した歴史絵巻の「荘内藩伝承大名行列」、荘内神社の創建を記念した荘内神社の神様や神具の行列「神幸列(しんこうれつ)」に加え、2022年は酒井家入部400年を記念して特別に庄内各地のお祭りが集まる「祝賀行列」という3つのパートで構成されているのだそう。

出発を待つ神輿、色とりどりの旗が風にはためく。

荘内神社には、酒井家藩主4人の藩主が御祭神(酒井家初代 忠次公、二代 家次公、三代 忠勝公、九代 忠徳公)として祀られていて、荘内大祭の時は、神輿から今の街の様子をご覧いただくために、4人の御祭神の御分霊を御本殿から神輿へお還しするのだそう。

荘内神社が創建された明治10年から続く、荘内大祭。毎年こうして神様は神輿で街を練り歩き見守ってくださっていたんだなぁ。
ここで行列の安全を祈願する御旅所祭を執り行い、様々な演奏や演舞が披露されてから、行列は街を練り歩いていく。

観客が見守る中、行列の役者たちが北広場に勢揃いする。

出発の前に、行列の安全を祈願する御旅所祭を執り行う。

左から、井伊直政家18代 直岳氏、榊原康政家17代 政信氏、本多忠勝家22代 大将氏、酒井家18代 忠久氏、徳川宗家18代 恒孝氏の長男の家広氏

400年を記念し、徳川家康を支えた「徳川四天王」筆頭の酒井忠次を藩祖とする酒井家との縁から徳川家と四天王の現当主がそろい踏み。

荘内藩甲冑武者隊 酒井忠次公 武勇伝「酒井の太鼓」

荘内藩甲冑武者隊 酒井忠次公 武勇伝「酒井の太鼓」、松山藩・荘内藩荻野流砲術隊、舞姫「豊栄の舞」の奉納、少年隊の論語素読、辨天太鼓創成会の触れ太鼓、少年三役奴振りや三役奴振りなどが披露された。みなさんの素晴らしい技の数々に、歓声と拍手が上がった。この瞬間を見逃すまいとカメラやスマホを構える姿もたくさん。

迫力満点の砲術隊。号令に合わせて火薬を詰める所作も無駄がなく、かっこいい。

少年隊が庄内論語の素読を披露。素読はもちろんのこと、その姿がかわいらしい。

舞姫の「豊栄の舞(とよさかのまい)」奉納。

奉納後のきらきらとした笑顔がとてもすてき。

大人も顔負け!元気な声が響き渡った少年三役奴振り。

荘内大祭の見どころ、三役奴振りの槍を使った豪快な技。

殿様がお通りになることを民衆に伝える役割を持つ三役奴振り。背丈よりも長い「ひょうたん槍」や「毛槍」を掛け声に合わせて、勢いよく受け渡す豪快な技を披露する。金のひょうたん槍は織田信長からいただいた物だという説もあるとか。

酒井家藩主忠勝公役の口上。

三代 忠勝公が28歳で庄内に入部したことから、忠勝公役として公募で選ばれた28歳の男性が口上を述べ、行列は街へ。

現代の街を練り歩く大名行列

各所で演舞や演奏を披露しながら、大寶館や致道館前、みゆき橋など目抜き通りの名所を通り、参道から荘内神社へ。ぐるりと街を練り歩いていく。

大寶館をバックに、元気な掛け声と太鼓の音が気持ち良い辨天太鼓創成会の触れ太鼓。

致道館前では、勝鬨(かちどき)を上げる勇ましい荘内藩甲冑武者隊。勝鬨とは、戦いに勝利したときに上げる喜びの声のこと。

美しい着物を纏い、美しい立ち居振る舞いで行列を進む女人列。

お姫様はみんなが憧れるからお役が3人なのかな?と思ったら、違いました(笑)
藩主の奥様である奥方と、奥方にお仕えする上臈(じょうろう)、中臈(ちゅうろう)なんだそう。その後ろには、腰元(奥方にお使えする女中さん)が続いていて、THE大奥!という感じ。なんとも美しい。

奥方をお守りする女性警護隊。薙刀(なぎなた)の演舞、身のこなしがかっこいい!

鷹狩の餌にする鳥を捕まえる「鳥刺し」というお役。

鍛錬のひとつとして黒鯛釣りを推奨していたから、庄内竿を持った武士かな?と思ったら、こちらのお役は「鳥刺し」だそう。棒につけたとりもちで鷹狩の餌にする鳥を捕まえていたんだそうで、棒の先をよく見ると鳥の飾りがついている。

藩主の鷹狩に同行する鷹匠。

写真右の方は、代々鷹匠をされていて、お住まいの旧町名は「鷹匠町」なのだそう。鷹の調教師として高い専門知識を持ち、藩主に仕えていたのだそう。

荘内神社の神様が街へ

荘内藩伝承大名行列の後は、荘内神社の創建を記念した「神幸列(しんこうれつ)」。はじめは、カラフルな旗が彩る。四神旗、日像旗、月像旗、五色旗と続き、舞姫や雅楽の奏者、宮司、神輿が進んでいく。

風に揺れるカラフルな旗の美しさ。

雅楽の音色にのせて幸せを祈り舞う、舞姫の奉納。

荘内神社の石原宮司。

荘内神社の3基の神輿が練り歩く。

神輿で街を練り歩き、神様に今の街をご覧いただくのだそう。この美しい神輿の飾りや意匠にも色々と意味がありそう。いつか由来を聞いてみたいなぁ。

庄内各地のお祭りが集結

神輿など神幸列の後は、酒井家庄内入部400年を記念して庄内各地のお祭りが大集結!

酒田まつり 大獅子

酒田市の上下両日枝神社の例大祭「山王祭」として、1609(慶長14)年から一度も休むことなく続いているお祭り。なんと大獅子が鶴岡に来るのはこれが初めて!

鶴岡天神祭 山車

学問の神様といわれる菅原道真公を祀る鶴岡天満宮の例祭。約130名もの引手が参加されたんだそう!

しょうない氣龍祭 姫龍

庄内町の「飛龍伝説」や「龍神信仰」という龍にまつわる伝説から生まれた新しいお祭り。ダイナミックに疾走する姫龍の山車が圧巻。

あつみ温泉 お湯輿まつり

温泉に感謝しながら温泉街を練り歩く「御湯輿」の担ぎ手に沿道の観客がお湯を掛けて盛り上がるという新しいお祭り。

酒田市 一条八幡神社 奴振り

一条八幡神社は、酒井家三代忠勝公が庄内入部後すぐに参拝されたという記録が残っているそう。大名行列の中で行うのではなく、殿様が神社に参拝される際にお迎えするために作られた奴振りということで、とても珍しいのだとか。

他にも白山神社の太鼓や大山犬祭りの保育園ミニ奴振りも花を添えた。こんなにお祭りが集まる行列を見れるなんて、たぶん人生に一度の体験。次は100年後かな?

やきそば、クレープ、あん玉、綿あめ。

お祭りのもうひとつの楽しみは、やっぱり出店。小さい頃に買ってもらったりんご飴や、高校時代にわいわい食べたキャンドルボーイ。いつも変わらぬおいしさのあん玉。人で賑わう鶴岡公園はやっぱりうれしい。

カラフルなテントの出店に人が賑わう。

おとなも子どもも夢中になっていた金魚すくい。ゆらゆらきれい。

白くてふわふわのきんつまがくるっくるっとひっくり返され、できあがっていく。

庄内名物わたしたちのソウルフード、きんつま(別名あん玉)。あんことシンプルな生地が素朴でおいしい。

「にぎわいステージ」では、ダンスなど様々な発表が見られる。

神様をお還しする

境内では、大名行列を終えたお役の方々が戻り荘内神社に参拝する。すべての行列が終わると還幸祭(かんこうさい)が執り行われる。この間は、写真は厳禁。みんな頭を下げる中、御祭神を宮司が御本殿へお還しする儀式。神聖な空気が漂う、貴重な時に立ち会わせていただくことができた。

大名行列が終わり、参拝。

還幸祭(かんこうさい)

落ち着いた境内の空気感もいいけど、お祭りの賑わいある雰囲気もとってもいいよね〜。また来年も見に行こう。友達も連れて、自慢げに解説もしちゃうおう。

基本情報

名称/荘内大祭
開催日/例年10月6日(2022年は10月9日開催)
ホームページ/http://jinjahan.com/gyoji/shonaitaisai/
アクセス/JR鶴岡駅から車で約8分
駐車場/無料あり

大瀧香奈子

大瀧香奈子

グラフィックデザイナー フルーツ王国 鶴岡市櫛引の農家に生まれる。おいしいものに囲まれて育ったからか、食べることがとにかく大好き!新しいことを知ること、体験することが好き。 最近は、庄内の風景を写真で切り取ること、植物を育てることに夢中。 面白そうなことを見つけると、すぐ飛び込みがち。 庄内にあるデザイン事務所 はんどれい株式会社所属。 SHONAI Fun!では、デザインやアートディレクション、編集などを担当。

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