「羽黒・芸術の森」で「顔」探し。
いくつ見つけられるかな?

アート・カルチャー

地元庄内で生涯を通して心象画を描き続けた、洋画家・今井繁三郎氏ゆかりの「羽黒・芸術の森」。かつて今井氏が暮らしたという緑あふれる敷地内を、木々に誘われるように進むと「今井アートギャラリー」の入り口があります。

今井氏の作品と、収蔵品の数々が展示された「今井アートギャラリー」。その前進である「今井繁三郎美術収蔵館」は1990年に開館し、2014年秋に一時休館しましたが、2016年春に現在の名称になり、芸術文化の発信拠点として運営を再開しました。館内にある今井氏の作品は、約400点ほど。世界各地で集めた民芸品は1000点にもおよぶそう。

「羽黒・芸術の森」。まず目に入るのは、つらなる石像に大きなアート作品。

緑に囲まれた建物は、鶴岡市山王町の旧家の土蔵を移築したもの。

ギャラリーの館長 秋野 わかなさんと、収蔵品の数々。

はじめて「今井アートギャラリー」を訪れた時、何より驚いたのが「顔」が描かれた絵や、「顔」のついた工芸品が多いこと。人・動物・神様・空想上の生き物など、こんなにも沢山の個性豊かな「顔」に出会える美術館は珍しい。そこで今回は、「顔」に焦点を当ててギャラリーを巡ってみることにしました。

入り口付近に飾られた、ブルーが印象的な今井氏の絵画の一部。
この絵の中にはいくつの「顔」があると思いますか?

ぱっと見た印象では、4人と答えたくなるところですが、じっと目を凝らしてみると…

おや、ここにも?

こんなところにも!

ぱっと見た時には気づかなかった「顔」が、背景の中から浮かび上がってくるのです。そしてまた、ひとつの「顔」だと思っていたものも、見る人によって、2人に見える時もあれば、3人・4人に見えたりする。今井氏の絵画は美しいだけではなく、絵を見る側に訴えかけてくるような面白味があります。

絵画の中に漂う特有の雰囲気。知っているモチーフを見つけたと思っても、ふと目を離すと、霞の中に消えてしまうような。一枚の絵と向き合う自分を取り巻く空気まで不思議に変えてしまう、没入感のある作品の数々。そんな作品の中から、お気に入りの「顔」を抜粋して一部紹介します。

どこまでが空気で、どこまでが「顔」か。分からないところが何より面白いと感じました。隠れた「顔」を探すというテーマで、今井繁三郎氏の作品をじっと見つめてみてはいかがでしょう?

さらに、館内でどれだけの「顔」に出会えるのかを検証すべく、その数をかぞえてみることにしました。すでに書いたように、人・動物・神様・空想上の生き物などさまざまな「顔」が存在しているので、人に対象を絞って、絵画の中の人びとや収蔵品をカウントすることに。

カウンターを持参。ゼロからスタート!

まずは木彫りの「顔」。そして次々と…
柔らかい笑顔を浮かべる「顔」。

ぐっと口元にちからの入る「顔」(前髪付き)。

点描と配色が美しい、タレ目の「顔」 など。

さまざまな人の「顔」に出会いました。
果たして、その総数は…?

なんと、547人!!

これはすごい!547パターンの「顔」にはそれぞれに特徴があって、自分の中の多様性を育んだような気分。見る人によって「顔」に見えたり見えなかったりするのも面白いですよね。絵画の入れ替えや企画展もあるので、何度訪れても新しい「顔」に出会えそう。

「今井アートギャラリー」では、普段は忘れていたようなワクワクが刺激されて、まるで映画を見たあとや、本を読んだあとのような満足感がありました。

さて、好奇心を満たしたあとはゆっくり休憩タイム。ギャラリーに隣接する、今井氏の自宅兼アトリエを改築したレストラン「羽黒・オーブンカトウ ovenKato」へ。

森の中に佇む「羽黒・オーブンカトウ ovenKato」。

ゆったりとした雰囲気の店内には、庄内の陶芸家 土田 英里子さんの陶器も置かれていました。

辛口がちょうどいい、お気に入りメニュー。定番チキンカレー 980円

店内には今井氏のアートや、生前使用していた画材などが残されている。

お腹も満たされて、すっかり満足な休日に。「アート」と聞くと、敷居が高い印象を受ける人も少なくないかもしれません。でも「今井アートギャラリー」は、明るい気持ちで見られる作品が多く、大人も子どもも親しみやすい美術館だと感じました。館内にはピアノもあって、音を出してもいいし、写真もOK。それぞれの楽しみ方を後押ししてくれる、自由な雰囲気のギャラリーでした。

「羽黒・芸術の森」ではさまざまなイベントも開催されているそう。
スケジュールは公式HPをご確認ください。

基本情報

名称/羽黒・芸術の森-今井アートギャラリー
営業時間/火~金 11:00~16:00・土日祝 10:00~16:00
開館日/4月24日から11月末まで(冬期は雪のため休館) 月曜休館
ホームページ/http://www.imaimuseum.net
維持管理協力金/大人500円 学生300円  小学生以下無料
駐車場/無料有り

すずきまき

すずきまき

写真家・物書き。神奈川県横浜市に生まれ、2020年春に山形県鶴岡市へ移住。同年、庄内の自然に魅せられて創作活動をスタート。柔和な雰囲気の作風で、日々のなかにある光を写している。2022年4月には鶴岡市内の湯田川温泉にて自身初となる写真展『春眠』を開催した。 ライフワークはひとり旅。温泉めぐりと自然観察を軸に目的地を選び、現在は東北地方を開拓中。無類の温泉好きで、温泉ソムリエの資格をもつ。夫婦+2匹の猫、はるとあきとともに気ままな庄内ライフをおくっている。

関連記事

TOP