鶴岡市内から月山を望みながら走ること30分。月山高原に見渡すかぎりに広がるブルーベリー畑がありました。月山高原鈴木農園の『月山ブルーベリーパーク』は、東京ドーム2.5個分の広大な敷地に1万本のブルーベリーが育つ、日本一大きなブルーベリー農園。毎年7月上旬から8月下旬、真夏に実る完熟ブルーベリーの収穫体験ができます。
小さなひと粒に、甘みと酸味がぎゅっと凝縮されたブルーベリー。以前、わたしもブルーベリーの苗を譲り受けたことがありましたが、2年余りで枯らしてしまった苦い過去を思い出します。たった1本の苗を育てることができなかったわたし。それに対して1万本ものブルーベリーを栽培している鈴木農園さん。天と地ほどの差に、尊敬の念を抱かずにはいられない…。
40年程前、ブルーベリーに一目惚れをしたという鈴木繁治さん。今もなお、小さくてかわいいブルーベリーに心を奪われているそうで——。世界一美味しいブルーベリーづくりを目指して歩んできた、“ブルーベリー人生”のことを話してくれました。
昭和50年頃、当時米農家を営んでいた繁治さんは、減反政策を受けて他に何か作るものはないかと考えていたそう。りんごや梨を育ててみたものの、台風の影響で落ちてしまうなどの苦労があり、“何かいいものはないか?”と探して出会ったのがブルーベリーでした。
ブルーベリー栽培がまだ一般的ではなかった当時、山形県内では初めての取り組みで、栽培方法がわかる人がいない中、すでに取り組んでいた長野県信濃町の農家さんに通いながら栽培方法を教わったといいます。日中、農作業をしてから出発し、午前3時頃に信濃町に着き仮眠をとった後、朝から農作業に参加させてもらうという、弾丸スケジュールを何年も続けて実践の中でヒントを得ていったそう。こんなエピソードも「好きだから苦にならなかった」と話してくれました。
昭和57年の春に最初の1000本を植え、3年目に実がついて収穫の喜びを知った。その後、徐々に増やして今では1万本になっていると言うから驚きです。どうしてここまでの規模に成長したのか?その理由のひとつに、月山高原の環境があるのだとか。
実はブルーベリー、酸性の土でしか育たないそう。(…なるほど、わたしがブルーベリーを枯らしてしまった理由がわかった気がします。それはさておき)月山高原の土は、かつての月山噴火で流れた黒土と赤土を多く含んでいて、酸性の土壌なのです。
それから、ブルーベリー栽培において大切なのが寒暖差。このあたりでは冬は3mも雪が積もり、冬の積雪と昼夜の寒暖差が美味しさを育みます。繁治さんとブルーベリー、そして土地との相性の良さ、すべてが運命的な出会いでした。
繁治さんにはブルーベリー栽培をはじめた頃から、決めていたことが3つあるそうです。ブルーベリーで専業農家を確立すること・羽黒町の特産品にすること・どうせやるなら日本一のブルーベリー農園をつくること。高い志を持って日々邁進してきた、その気持ちがこの風景をつくっているのだと思いました。
わたしが都心部で暮らしていた頃は、果物や野菜はスーパーで買う他に選択肢はありませんでした。でも、庄内に越して来てからは、生産者さんから直接買うこともできる環境になり、同じ果物でも作る人により味が違うんだと気づかされました。だからこそ、“誰がどんな場所でつくったものなのか”ということが、とても大切だと思います。
今回、全くのゼロベースから日本一の『月山ブルーベリーパーク』をつくったその熱意に感動し、エピソードを通してブルーベリーへの愛情が本物だと伝わってきました。農家さんって、本当にかっこいい…!繁治さんの人生そのものともいえるブルーベリー。きっとひと粒食べれば、その美味しさを通して繁治さんの想いが伝わるはず。
基本情報
名称/月山高原 鈴木農園『月山ブルーベリーパーク』
料金/<収穫体験&食べ放題 >
1時間コース 大人1500円・子供500円
2時間コース 大人1800円・子供800円
開園/7月上旬〜8月下旬
営業時間/9:00〜17:00
ホームページ/http://www.suzukihaguro.com
アクセス/山形県鶴岡市羽黒町上野新田 田上台80
駐車場/あり
※掲載している内容は、2022年8月時点での情報です。最新情報は施設のホームページやSNS等でご確認ください。