学びのきっかけは
ウェッジウッドブルー

遊ぶ・体験

思い出がつまった大切な場所

「小さい頃はザリガニ釣りとかしてたんですよ。」と語るのは酒井家第19代であり致道博物館の副館長酒井忠順さん。

酒井さんから2冊の冊子をいただいた。ひとつは庄内藩の歴史などを綴った「故(ふる)きを温(たず)ねて」、もうひとつは「新しきを知る」。ご本人が庄内藩の歴史をまとめ書き綴ったものだ。

何気なく「新しきを知る」をパラッとめくった。歴史建造物とともに、幼い頃の酒井さんの夏休みの思い出や、刀剣女子によって行列ができたエピソードなど、ユーモアたっぷりに描かれている。「こんな楽しみ方もアリなんだ」と、かな〜りリラックスして歴史に立ち向かうことができそうだ。

とくに、致道博物館にある旧鶴岡警察署庁舎について「ウェッジウッドブルー」と表現されていたページがあり、この響きがなんとも素敵で強く印象に残り、改めて致道博物館とともに庄内藩の歴史に触れてみたいと思った。

旧鶴岡警察署庁舎、国の重要文化財

擬洋風建築、多層民家、赤門、御隠殿…
バラエティ豊かな歴史建造物!

「旧鶴岡警察署庁舎」は遠くからでもよく目立つ。2013年から修復がはじまり、明治時代に建設された当時の色を再現、2018年にリニューアルお目見えとなった。

修復以前は白で、その色に慣れていたイチ市民としては当初かなり唐突感があったけれど、今となっては陽に照らされた青も、青空に溶け込むような青も、雨に濡れた青も素敵だなと思う。他の地域に擬洋風建築の建造物はあるけれど、この色は他にはなかなかないと思う。

警察というからには、取り調べ室が2部屋もある。身分によって使い分けされていたそう。2階のバルコニーからは市内も一望できて、ちょっと特別感。刀剣の展示時期にはここで刀剣女子たちがよく写真を撮っていたっけ。どうやったら上手く自撮りできる?教えてほしいよ。

ここだけをぐるぐる回って、映えスポットを探してしまいそうになるけれど、せっかく来たので敷地内の建物も堪能してみる。

取材中(2022年6月)は修復作業中のため外観の見学と外回りの散策のみ。ここも国の重要文化財

同じく目をひくもうひとつの擬洋風建築は「旧西田川郡役所」。手前の広場ではお弁当を広げたり、子どもたちが自由に遊び回ってもいいそう。酒井さん、少年時代は木登りも楽しんでいたのだとか。そんなことを聞くともうすぐ2歳になる息子を連れてきたかったと思う。今はいろいろ踏んづけるのがブームだから、ちょっと不安だけど。

「旧庄内藩主御隠殿」には歴史展示や中庭を鑑賞できる広い奥座敷が広がる。展示品で気になったのは一本の長〜い釣り竿。一般的には接木で作られる釣り竿だけど、苦竹を使用して一本の竿にした。釣りを奨励していた庄内藩では釣りが上手いと出世ができたそう。

旧庄内藩主御隠殿。旧藩主の「酒井伯爵邸」

江戸から御隠殿とともに運ばれた赤門

釣り接待とかもあったのかな?

広い奥座敷では、窓から見える一枚絵のような中庭を眺めながら、ごろんと寝っ転がっている人もいるんだとか。ちなみに酒井氏庭園は国指定名勝に指定されている。なんて贅沢なお昼寝!奥座敷では子ども向けに論語の素読を定期的に開催中。素読は藩校だった致道館で奨励していた学習法のひとつだ。

酒井さんが幼い頃ザリガニ釣りを楽しんだ思い出がある中庭。
「訪れた人たちにも良き思い出の場所となるようにしっかり守りたい」

北前船や職人用具などが展示された「民具の蔵」、「重要有形民俗文化財収蔵庫」には当時実際に使われていた「ばんどり」などを展示している。「ばんどり」は装飾が細かく、庄内藩の豊かさや美意識を教えてくれるよう。

「民具の蔵」には北前船などや農具、職人が使っていた当時の備品などが収められている

「重要有形民俗文化財収蔵庫」。ばんどりコレクションなどが密かな人気を集めている

「ばんどり」は荷物を背負う時に使用した背中あて。農業、漁業と幅広いシーンで利用された。
華やかな装飾の「祝いばんどり」など、見比べるのも楽しい

当時使われていた衣類や民具が本当に綺麗な状態で保管・展示されている。当時の暮らしが見えてくる

朝日地区田麦俣の民家を移築した「旧渋谷家住宅」。茅葺き屋根の虫を炙り出すために冬場は実際に囲炉裏に火をつける。それにしてもこのお宅、農家出身の私からみても、当時にしては大きな住居だと思う。豪農だったのか。

3つめの国の重要文化財!「旧渋谷家住宅(多層民家)」

引き戸の溝にはそろばんがうめこまれている。ガラガラと開けやすくするための工夫らしい

冬は実際に囲炉裏に火を焚べる

酒井さん、新しい企画もアリですか?

建築から興味を持って見学した致道博物館。幼児教育に興味津々の新米ママとしては、今度は論語や徂徠学など、勉学の視点から学んでみたい。歴史っていろんな角度から楽しめるのが面白い。と新たな気づきがあった。

そして巨大鬼ごっこ、素読&ピクニック、擬洋風建築で写真撮影イベントなど、勝手にイベントを脳内コラボレーション。そしたらもっと歴史がワクワクと身近なものに感じられそう。「続・新しきを知る」がスタートしたあかつきには、そんなイベントレポートも書き綴ってくれるかな、酒井さん。

基本情報

名称/致道博物館
営業時間/3月〜11月:9時〜17時(最終入館16時30)、12月〜2月:9時〜16時30(最終入館16時)
休館日/年末年始、12月〜2月の水曜(展示替のため、一部休室になることあり)
入館料/一般800円、高・大学生400円、小・中学生300円、団第割引あり
アクセス/JR鶴岡駅から車で6分
ホームページ/https://www.chido.jp/

本間聡美

本間聡美

Harvest Photographer 庄内生まれ、農家の娘。 都会に憧れ、早く都会に出たい一心で、進学を機に東北の都仙台へ。卒業後は撮影、制作の仕事に従事。仙台ライフを楽しみつつも、仕事を通じて出会う地方のひとたちの力強さに魅力を感じ、自分の故郷を気になりはじめました。 仙台と庄内の2拠点生活などを経て2015年から庄内を拠点に活動をスタート。現在はフリーランスとして東北の、食・農・人・風土などの撮影を手掛けています。 今もやっぱり冬は苦手ですが、雪解けから一気に進む季節の彩りに、すっかり魅了されっぱなしデス。 移動、お散歩、寄り道好き、まっすぐ家に帰れません。

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