オトナが本気でかまくら作り
雪国の秘密基地を楽しむ

遊ぶ・体験

何を思い立ったか、「今年はかまくらを作ります!」と高らかに宣言したニショイのオット。なんでも、寒~い冬を楽しく乗り越えたいという目論みがあるそうです。毎年忘れずにやってくる、雪に閉ざされるこの季節。去年と同じことをして過ごすより、新しいことや楽しいことに挑戦するには良い時間です。

東北の中でも積雪の少ない太平洋側で育ったツマにとって、「かまくら」という憧れの響きは「雪国っぽ~い」と心のフックにしっかりと引っかかり、早速計画を練ることになりました。

今回は、雪下ろしを体験したい!と都会在住の友人たちが手伝いに来てくれたので、だったら!とかまくら作りを同日開催することに。昨年の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」ならぬ、「かまくら作りの8人」です。

鶴岡市の中でも山間部に住む私たちは、冬の間に何度か屋根の雪下ろしをします。積もった雪が落下して危ないことに加えて、雪の重みで部屋の戸が開かなくなってしまうのです。危険が伴う重労働で、貴重なお休みも丸1日潰れてしまいます。
ですが、『大変なことも楽もう!』がモットーな家族なので、雪下ろしの合間に屋根の上でコーヒーを飲んだり、ちょっぴり優雅な時間をお楽しみに生活しています。そんな庄内暮らしの日常を、友人たちにも共有です。

まずはどんなかまくらを作るか、作戦会議からスタート。秘密基地のような小屋で、少年のように目を輝かせる彼ら。ドーム型が良いか、アーチ型が良いか・・・。

屋根に上がって、雪下ろし

屋根の雪下ろしからスタート。雪にしっかりとハシゴを固定し屋根に登ります。高所が苦手なツマも最初はへっぴり腰でしたが、雪国生活も4年目にもなると慣れたものです。
屋根に上がったら、スコップやスノーダンプといった、雪国の暮らしに欠かせない道具で雪を落としていく。また、各家庭で作る「シューター」と呼ばれる、雪を滑らせて落とす「滑り台」を使って効率良く作業をしていきます。
いつもは3人のところ今回は9人で下ろしたので、膝まであった雪が1時間半ほどでスッキリしました。

最初の難関。登り慣れない梯子はドキドキですよね。

膝の高さまで雪が積もっています。

ひと汗かいたら、「屋根の上カフェ」と称して休憩タイムをとります。定番メニューは、コーヒーにみかん、自家製チーズケーキ。全身運動で疲れた体に染みわたる〜。遠くまで続く、真っ白な景色を眺めながら飲むコーヒーやチーズケーキは、いつもより何倍にも美味しく感じられます。

屋根の上カフェオープン。自家製チーズケーキとお茶で一服。

いざ!かまくら作りへ

数日前に、オットが下ごしらえ作業として、雪山に水をかけて固めておきました。崩れないように安全確保が大切です。夜な夜なYouTubeで、かまくら作りの動画を視聴していたのでイメトレは完璧。

入口を決めたら、少しずつ削りながら掘っていきます。空間を作るために、雪の壁を少しずつ薄くしていきます。水を含んだ重た〜い雪なので、掘って運ぶのも一苦労です。途中交代しながら、あっという間にかまくららしくなりました。

ジャーン!男性が7人入れるくらいのかまくらになりました。中は、身長160センチ位であれば腰を曲げずに立てるんです。こぢんまりとしたものをイメージしていたので、こんなに大きくなるとは…オトナの本気ってすごい。入口やてっぺんに鎮座する雪だるまのデティールにもこだわりがあるようで、繊細な男子たちによるかまくら作りはこれにて閉幕。(拍手)

山の保存食に舌鼓

完成したところで、ランチタイムに。かまくら=鍋でしょ!と、雪遊びの後はツマ特製のキムチ鍋と鶏鍋をみんなでいただきました。

せっかくなので、鶴岡の郷土料理べろべろ餅汁も準備しましたよ。「なんだそれ〜!?」とツッコミを入れたくなる個性的なネーミングの「べろべろ餅」とは、鶴岡市関川で作られる、うるち米で出来たお餅のことです。秋田のきりたんぽにも似た、細長い形状で「べろべろ〜」っと機械から出てくるからこの名がついたそうです。(諸説あり)古い米を残さず美味しく食べる昔の知恵で、狩猟の際の携行食として食べられていたと言われています。名前に似つかず、素朴なお餅。

その他にも、ゼンマイ煮やたけのこ煮、わらびのお浸しなどの山の保存食も食卓に並び、意外にもイタドリ炒めが人気でした。みなさん渋いね!

おかわりの手が止まらない。食欲旺盛な友人たちのおかげで鍋は空っぽに。

べろべろ餅汁。ツルツルもちもち食感がクセになります。

甘いものは別腹!小屋に戻って、焼きマシュマロとお汁粉風べろべろ餅がデザートです。べろべろ餅は甘くもしょっぱくも変身できる優れもの。そして、最近知ってしまった罪な味、アルフォートに焼きマシュマロ乗せ。ふわとろ食感がとっても美味しいんです。(そんなことを言いつつも、マシュマロを買い忘れて、友人に買ってきてもらいました…)

火を囲むと、ポツリポツリと将来の話や、鶴岡での暮らしなどふだん話題にしないような深い話が出てきます。小さな火でも、じんわり暖かくて心まで解けていく感覚があります。次々と変わる炎の色、煙の匂い、ぱちぱちと弾ける薪の音。沈黙すら楽しいひとときです。

蝋燭の灯りで過ごす夜

みんなと過ごした後日、流石に大人数でかまくら鍋は囲めなかったのでニショイ家だけで鍋パーティーを開催しました。この日はトマト鍋が主役!天然冷蔵庫(雪)で冷やしたビールを持ち込みました。全ての音が雪に吸収されて、静かな時間が流れます。電気ではなくて、控え目な蝋燭の灯りが丁度いい。ちょっとオトナな雰囲気です。

パカーン!アツアツのお鍋

早く食べたくて待ちきれないツマ

とろ〜りチーズをかけて

はふはふしながら食べるのがいいんですよね

庄内の冬は、雪かきや屋根の雪下ろしなどといった大変なこともありますが、お金かけずに楽しめることは盛り沢山です。新鮮な海の幸、野菜、お酒も、全国に誇れる美味しさだと思っています。冬こそ、庄内を思いっきり楽しみましょう!

最後に、かまくら作りの注意事項です。強度や天候によって、作っている途中で崩れてしまうこともあり得ます。事故やケガを防ぐためにも、帽子・手袋の着用をお忘れなく。できれば、ホイッスルを持ち歩くと良いかもしれません。複数人がいる中で遊んだり作業を進めてくださいね。安全に気をつけて雪遊びを楽しんでくださいね。

後日のかまくら、1ヶ月経った今も溶けずに庭先にあります

ニショイ

ニショイ

鶴岡市関川生まれのカメラマンのオットと、宮城県石巻市生まれのイラストレーターのツマ。過疎が進む故郷と、3.11で被災した故郷を持つ2人が、『地域のために何かしたい』を原動力に『ニショイ』を屋号にして日々の暮らしをSNSで発信しています。サウナと車旅、3時のおやつ時間が大好きです。庄内のおいしいものや美しい風景、文化、それを支える縁の下の力持ちの方々をご紹介し、皆さんと共有できたら嬉しいです。

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