だだちゃ豆の香りにのせて
庄内の魅力を届けたい

遊ぶ・体験

その昔、庄内藩の豆好きの殿様が、旬を迎えた豆を取り寄せては「今日はどこのだだちゃ(庄内の方言で=お父さんの意味)の豆だ?」と尋ねたことからそのまま愛称として広がったとも云われている「だだちゃ豆」。*諸説あります

茶色のうぶ毛に覆われ、シワの寄ったサヤは、他の枝豆に比べてやや小ぶりでちょっぴり不格好。けれどゆでた時に広がる香り、食べた時に感じるうまみは、庄内のブランド食材を象徴するかのようなインパクトがあります。

今回はパン教室「COUNELL(コーネル)」とオンライン料理教室「野菜の恵みコーネル」を主催する齋藤孝子さんに、だだちゃ豆の美味しいゆで方とアレンジレシピ、そしてご自身の活動を通じて伝えたい庄内の魅力についてお話を伺いました。

だだちゃ豆は江戸時代から守り続けてきた在来野菜。庄内の家庭ではどんぶりやザルなどでたっぷりといただきます

孝子さんは29年前、結婚を機に神戸から鶴岡にやってきた庄内移住組のひとりです。旦那様と月山や鳥海山登山などアクティブに活動し「春に雪が解けて緑が芽吹くでしょ。その景色がね、ものすごく好きなの!」と、庄内の四季を存分に体感している孝子さん。しかし、まだ移住したばかりの頃は友人や知人もいない場所で、言葉や文化、習慣の違いなどなど地方に嫁いだらよくある困ったエピソードも多々あったそう。今となっては庄内の自然が織りなす景色にすっかりトリコの様子です。

赤川の土手に咲く桜

ある時、出身の神戸や関東に比べてパン屋さんが少ないことを旦那様に話すと「だったら、美味しいパンを自分で焼けるようになればいいじゃん」と、思ってもいなかった言葉が返ってきました。ならば!と、パン作りを学び資格を習得し、気軽にパン作りにチャレンジできる教室を立ち上げたのが20年前。その後、大好きな料理の腕前を生かしおせちや巻き寿司、季節の料理教室と幅広く展開するようになりました。

地元の生徒さんたちに愛されている「コーネルパン教室」。作ったパンは持ち帰り。量がたっぷりだから初めての生徒さんは驚くかも!

私は「野菜の恵みコーネル」オンラインクラスのだだちゃ豆レッスンに参加。(この時点で参加したかった料理教室を2回ほど逃している!)

この教室では、孝子さん自ら見極めた生産者さんの野菜を調達し、その都度生徒さんに発送します。教室の日は徳島や秋田など全国にいる生徒さんと、パソコン上であいさつをしてクラスがスタート。もちろんメインで使用する食材は直接発送した庄内野菜です。私は現地組なので直接ご指導していただきました。

だだちゃ豆の美味しいゆで方は時期と種類によって変わるそう。レッスンの時に使用する8月から9月のだだちゃ豆で比較すると、8月初旬の「早生白山(わせしらやま)」は2分30秒程度、お盆明けに収穫する「白山(しらやま)」や「晩生甘露(おくてかんろ)」は3分程度、9月の「尾浦(おうら)」や「晩生白山(おくてしらやま)」は3分〜4分程度が食べ頃なんだそうですよ。

まずは豆に塩をまぶし、こすり合わせながらだだちゃ豆の特徴である産毛をとります。これがゆで上がった時にきれいな緑色に仕上げるためのひと手間。鍋にたっぷりと水を張り、沸騰したら一気に豆をいれます。

美味しくゆでるコツは、ゆですぎない、収穫した豆はすぐゆでる、ゆでた後はすぐ冷ます、の3ポイント!豆の3~5倍の水に塩ひとつまみを入れて沸騰させてからゆでます

8月末日のこの日はキッチンタイマーで3分、ゆで上がったら冷水で一気に冷やし、多めの塩をまぶして完成です

本当にきれいに仕上がった緑色にうっとり。いつもざっくりとゆでていたけれど基準がわかると間違いないですね!

「だだちゃペペロン」。オリーブオイル、ニンニク、鷹の爪を弱火で香りを立たせて、ゆでた豆を入れたら強火で一気に和えます。息子も食べるかも!と伝えたら「じゃあ鷹の爪はいれないでおこうね」と孝子さん

あっという間に4品が完成

この日は、だだちゃ豆の美味しいゆで方の他に「だだちゃペペロン」「だだちゃ豆入りひじきのチラシ寿司」「だだちゃ豆入り山形のだし」と、全部で4品!ハァ〜〜心地よい達成感!いつも適当に作っていた料理、きちんと作ると気持ちが整いますなぁ〜。「料理」を「お料理」と、いつもより丁寧に言いたくなりますね!

これ、試食以外は全部持ち帰り!家族で美味しくいただきました

旬の食材を使用したレシピを提供している孝子さんは、食を通じて庄内の魅力も発信したい!と、とっても頼もしい意気込みです。

レッスン中は「例えば、春に採れる湯田川孟宗の産地は温泉街で、孟宗づくしの孟宗御膳を振る舞っていたりね、っていう話をするの。そうするとみんなへぇーって庄内の暮らしに興味を持ってくれるんだよ」と、地元ならではの話題を取り入れながら、オンラインでもアットホームな雰囲気を作っている様子。

オンラインクラスの生徒さんにもその思いが通じてか、スタートして2年目の現在は、年間でクラスの予約をしてくださる方や、生徒さんが口コミで少しずつ増えているそうです。

苦労も多かった庄内の暮らしでしたが、こんなにも魅力を感じる転機となったのは、スポーツ推薦で高校進学した息子さんと一緒に兵庫県で暮らしはじめたことでした。「都会暮らしを満喫するはずが、不思議と新鮮な庄内食材や、雪景色を思い出すことがあったんだよね」と孝子さん。

庄内に戻り子育てがひと段落した頃、これまでを客観的に振り返ると、身内もいない、都会に比べて何もないと思っていた庄内は、感動を与えてくれる自然や食、人とのつながりを与えてくれた場所なのだと実感することができたと言います。

お料理教室を通じてこれからのたくらみもあります。

「みんなにね、来てもらいたいの。今はオンラインでなんでもできるし、料理教室もできる。だけどやっぱり景色や香り、そんなものを直接肌で感じるって大切だと思うんだよね。春の桜、夏や秋の夕陽、山もそうだけど、吹雪の時だって、最高の景色だと思わない?」

言葉や習慣の壁がいくつもあって、つらいこともあったであろう孝子さんの庄内ライフが、こんなにも彩りにあふれているということを聞いて、私も嬉しくなりました。

教室、レシピ開発、情報発信など、とにかくパワフルに手がけている孝子さん

「だだちゃ豆はね、ゆでてそのまま食べるのが一番美味しいの。けれど、旬の食材を使ってお料理をすることで心がより豊かになれるのよ」

近頃料理ブーム再来の私もこの気持ちに共感しました。そのまま出しても美味しい庄内の旬野菜は、手をかけ愛情をかけることでもっと美味しくなる。家族の「おかわり!」をたくさん聞きたいから、また料理教室にお邪魔しよう。

基本情報

名称/COUNELL(コーネル)/野菜の恵みコーネル
営業時間/ 午前の部9:30〜12:15、午後の部14:00〜17:00(最終開始時間16:30)
休業日/土日祝
ホームページ/
野菜の恵みコーネル https://peraichi.com/landing_pages/view/counell-cooking/
COUNELL(コーネル) https://counell.com/
アクセス/JR鶴岡駅から車で約10分
駐車場/1台

本間聡美

本間聡美

Harvest Photographer 庄内生まれ、農家の娘。 都会に憧れ、早く都会に出たい一心で、進学を機に東北の都仙台へ。卒業後は撮影、制作の仕事に従事。仙台ライフを楽しみつつも、仕事を通じて出会う地方のひとたちの力強さに魅力を感じ、自分の故郷を気になりはじめました。 仙台と庄内の2拠点生活などを経て2015年から庄内を拠点に活動をスタート。現在はフリーランスとして東北の、食・農・人・風土などの撮影を手掛けています。 今もやっぱり冬は苦手ですが、雪解けから一気に進む季節の彩りに、すっかり魅了されっぱなしデス。 移動、お散歩、寄り道好き、まっすぐ家に帰れません。

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